Vol.2 捻挫をした時の対処/その後の予防方法
前回長趾伸筋について改善方など記述したが、今回は捻挫についてだ。
まず大前提だが、捻挫とはどのような状態の事を指すのか。
捻挫とは足関節に関わる靭帯の損傷の事を指す。
※1
内側にはいわゆる三角靭帯(前から順に赤=前脛距靭帯、黄=脛舟靭帯、緑=脛踵靭帯、青=後脛距靭帯)がある。
※2
外側には3つの靭帯、前から順に赤=前距腓靭帯、緑=踵腓靭帯、青=後距腓靭帯がある。
どんなスポーツにも限らず共通して言えるのが、圧倒的に外側の靭帯の方が怪我をする確率が高い。
なぜ外側の方が怪我をしやすいのか。
答えは単純明快。
内側よりも外側の方が靭帯が少ないのである。
内側は4つの靭帯が支えているのに対して、外側は3つの靭帯。
どちらの方が強度が強いか。
小学生でも分かる問題だろう。
そして外側の中でも損傷をしやすい靭帯というのが前距腓靭帯である。
それがこの部分だ。
前回の記事を見ていたものなら気付いただろうか。
そう、前距腓靭帯と長趾伸筋は痛みの出る部位が似ているのだ。
そして捻挫と一口に言ってもこれが靭帯の損傷なのか、それとも筋肉の損傷なのか、素人には非常に難しい判断となる。
だからこそ前回の記事と今回の記事を参考にして欲しい。
ちなみに今回は捻挫(靭帯)についてなのでその対処法を記載する。
捻挫(靭帯)の損傷の場合、基本的には絶対に伸ばしてはいけない。
これは足関節だけでなく他の部位でも同じ事が言える。
余談だが、突き指をした時に伸ばしてはいけないというのもこれに関係している。
靭帯は自らが可動することはない。
ただ骨と骨とを繋ぎ合わせ骨があらぬ方向に行かないようするためのストッパーなのだ。
つまり損傷している靭帯を伸ばすというのは愚の骨頂だ。
怪我をした直後は縮めて固定をするに限る。
ちなみに多少知識のあるものなら「先にアイシングをしなくていいのか?このトレーナーはクソだな!」なんて声が聴こえてきそうなものだが、そんなことよりまず固定しろと私は言いたい。
今世間ではアイシング議論が色んなところで交わされているが、私はどちらにも属さない。
要は臨機応変にやれということだ。
さてそんな事は置いといて。
固定した後は基本的には医者に行く事を推奨する。
何故って?
靭帯と一緒に骨が剥がれてしまう、所謂裂離骨折を併発している可能性もあるからだ。
そして大事な事がもう一つ。
医者(医師免許保持者)以外に診断をつけられるものはいないからだ。
これについてはまた次回の記事で話題にしようと思う。
捻挫と診断がついたのなら後は治し方と予防法だ。
病院や整形外科などでは超音波治療器などを用いて患部の治療を行う。
超音波治療には大きく分けて2つの効果がある。
温熱効果と、非温熱効果だ。
温熱効果には筋肉を柔らかくする効果、非温熱効果には組織(細胞)の回復促進効果がある。
あとはよくあるのがチューブトレーニングだろう。
だがアスリートであるならばそれだけではまだ足りない。
今回はアスリートがやるべきリハビリテーションの中の一つを紹介する。
それは足指トレーニングだ。
足指の筋肉というのは足の裏側や足の甲などに繋がっている。
その中でも足裏というのはバランス感覚を司る器官が多くある。
捻挫直後固定をしてから一定期間経ったのちに固定を外すと、びっくりするくらいバランス感覚が失われる。
これは足指が動かせない状態でいるためバランス感覚器官である足裏の筋肉が衰えているからだ。
筋肉は使わないと衰える一方である。
バランス機能が失われた人間は転倒しやすくなる。
つまり捻挫の再発リスクが上がるのだ。
これを防ぐ為に足指トレーニングが必要なのである。
何をするかと言うと、これだ。
足指をグー✊とパー✋にする。
そしてもう一つ大事なのが、足裏マッサージだ。
足裏はバランス感覚器官が多くあると言った。
足裏のマッサージをする事はその感覚を徐々に戻していく。
ちなみにマッサージに関しては足裏を撫でるだけでも効果がある。
これに関してはどんな方法でも構わない。
足裏が刺激され、触っているという感覚があるならば何でもいい。
普段足裏を触っていない人なら効果は絶大だろう。
最後に捻挫とは靭帯の損傷だと言ったが、結局はそれに付随して筋力低下やバランス感覚低下など種々の機能低下を引き起こす。
前にも言ったが基本的に怪我はほっとけば治る。
しかし治った際に他の機能がマイナスのスタートを切ってしまうとアスリートにとっては厄介だ。
スポーツ復帰の際に0からのスタートなのかマイナスからのスタートなのかでパフォーマンスやモチベーションは変わってくる。
これを機に怪我をしたら治るまで何もしないというのはもう辞めよう。
自分の身体を知るチャンスだと思え。
鈴木 翔
引用画像※1.※2
https://footeducation.com/ligaments-of-the-foot-and-ankle-overview/
Vol.1 足首周りの痛みとリハビリ
足関節。
足関節と聞いて一般の人ならまず足首、くるぶしの周辺を想像するだろう。
しかしスポーツ選手、アスリートであるならばそれだけではまだ足りない。
何故それだけでは足りないのか?
今回はそれについて書き綴る。
サッカー選手でよくあるの怪我の中に足関節の捻挫がある。
「プレイ中に足首を捻って痛めた」、「プレイ中は気付かなかったけど気付いたら足首が痛かった」。
選手からの言葉は様々だ。
「プレイ中に足首を捻った」
これについてはみんな容易に理解出来るだろう。
しかし問題なのは後者である。
「気付いたら足首が痛かった」
果たしてこれは本当に捻挫なのだろうか?
結論から言うと、この証言で多く当てはまるのが『長趾伸筋の炎症』である。
長趾伸筋とは何か。
簡潔に言うと足関節、足指を上げる筋肉である。
詳細は自分で調べるべし。
この怪我厄介なのが前述した通り、捻挫と曲解される事がある。
何故曲解されるのか、それは痛みの出る部位が似ているためだ。
捻挫でも長趾伸筋の炎症でも大体この辺りに痛みが出る。
そして大体同じ動きで同じような痛みが発生する。
素人では判別が難しいであろう。
病院などに行っても、「軽い捻挫ですね、安静にしてれば大丈夫ですよ」と帰される事なんてざらにある。
※ちなみに医者をディスってるわけではない。
基本的に大体の怪我は安静にしていれば治ってしまう。
この2種類の怪我に関しても同じ事が言える。
つまり、ほっといても治る怪我に医者は時間を使えないのである。
大事なのは、どちらの怪我なのか、どうすれば早く治るのか、そして再発を防げるのかという事だ。
まずどちらの怪我なのか、これに関しては案外簡単に分かる方法がある。
足関節が90度の状態から痛みのある方の足の甲に自分の手などで抵抗をかけて、足関節が筋力によって耐えられるならば捻挫、耐えられず痛みが出るなら長趾伸筋炎の疑いが濃厚である。
どちらの怪我か分かったのならあとは治し方。
そしてより重要なのが再発予防の方法である。
キーワードは「伸ばす」、「縮める」。
今回は長趾伸筋炎についてのみ記述していく。
長趾伸筋炎は筋肉の炎症である。
発生原因の多くがインステップなどでボールを蹴る際の動作である。
長趾伸筋について調べトレーニングの知識があるものなら分かると思うが、インステップ動作でつま先を下に向けて足に重り(ボール)を当てるという動作は、長趾伸筋にとんでもないエキセントリックな負荷がかかる。
つまりインステップを練習しまくっている選手というのは、ほぼ必ずこの怪我にぶち当たる。
ではどうすればこの痛みを軽減し、早く治す事が出来るのか。
これについては、ひたすら伸ばす事が重要である。
長趾伸筋は足首、足指を上げる筋肉だと説明した。
伸ばすなら逆の事をすればいい。
伸ばす、より一般的な言い方をすればストレッチをする、という動作は基本的に伸ばしたい筋肉の機能と逆の事をすればいいのだ。
そして次に再発予防だ。
様々な方法があるが、今回はトレーニングを紹介しようと思う。
病院や接骨院などでよく紹介されるのがゴムチューブによるトレーニングだが、より強度を高める場合に僕が用いるのがプレートを用いたトレーニングだ。
画像のようなスクワットの姿勢を作り、つま先に2.5kgプレートを乗せて耐えるというトレーニングだ。
まずはこの状態で30秒〜1分間耐えるトレーニングを行う。
1分間出来るようになれば足首周りの筋力はかなり向上するだろう。
そして冒頭で説明したように足関節というのは足首、くるぶし周辺だけ想像するのでは足りないと言った理由はここで理解出来る。
このトレーニングをやると分かるのだが、足関節の筋肉というのはふくらはぎや、脛の前側の筋力が非常に重要な役割を担っているということが分かる。
脛の前側は前脛骨筋や足趾伸筋群が集まっていて、これをトレーニングすることで足首の痛みを軽減出来る可能性が大いにあるのだ。
アスリート、スポーツ選手であるならばゴムチューブトレーニングをひたすらやっていれば良いわけではない。
足関節には何の筋肉が関わっているのか、何の筋肉をトレーニングし、それによってどんな効果が得られるのか、ストレッチをしてどんな効果が得られるのか、そこまで考えて身体のケアをしなければただの素人と同じである。
もっと上を目指すにはもっと自分の身体について理解するべきだ。
鈴木 翔